アメリカ車アーカイブ

1950~1980年代のアメリカ車の歴史と魅力をアーカイブする専門ブログ

🎶 車載レコードプレーヤーの世界:モバイルミュージック黎明期の夢

1950年代後半から1960年代初頭にかけて、アメリカの自動車文化は空前の発展期を迎えました。その中で登場したのが、“車内でレコードを再生する”という一見無謀とも思えるオプション──**車載レコードプレーヤー(In-Car Record Player)**です。

一瞬で廃れたこの贅沢オプションは、クラシックカー界において今も語り継がれるロマンの象徴です。

 

Highway Hi-Fi

🔧 1. 技術のはじまり:Highway Hi-Fi(ハイウェイ・ハイファイ)

最初に車載レコードプレーヤーを導入したのは1956年のクライスラー

👉 音質は良好だったが、専用レコードしか使えない点と、メカの耐久性が低く、数年でフェードアウト。


📻 2. GMRCAの挑戦:Cadillacにも搭載されたIn-Car Record Player

クライスラー系に続いて、**GMゼネラルモーターズ)**も車載レコードプレーヤー市場に参入。

  • 製造:RCA Victor(ビクター)製

  • 形式名:Model 980988(通称)

  • 対象車種:キャデラック、ビュイックポンティアック ほか

  • 再生メディア:45回転(7インチ)レコード

✅ Cadillacでの搭載

1958〜1960年頃、キャデラック(とくにSeries 62やDe Ville)でディーラーオプションとして提供されていた。

  • インパネ下に吊り下げ取付

  • 手動スライド開閉式トレイ(レコードを中にセット)

  • 専用アンプとスピーカーと連動

👉 運転中の振動に弱く、針飛びや故障が多発。しかし“贅沢の象徴”として限られたユーザーには愛された。


📀 3. Fordやアフターマーケットの追随

フォードも1960年代初頭に車載プレーヤーを短期間採用。 また、以下のようなアフターマーケットメーカーも出現:

  • ARC (Automotive Record Changer)

  • AutoVictrola

これらは家庭用プレーヤーを自動車対応にカスタムした製品が多く、DIY感のある構造も人気の一因だった。

 


📉 4. なぜ消えたのか?

❌ 振動問題

当時のサスペンション技術では道路の段差や揺れに対応できず、針飛びが頻発。

❌ 使い勝手の悪さ

レコードの入れ替えが煩雑で、安全運転と相性が悪い。

✅ 登場した「8トラックテープ」

1965年以降、より安定して再生できる8トラックテープが登場し、車載オーディオの主流へと取って代わった。


💎 5. コレクターズアイテムとしての価値

今日では、当時の車載レコードプレーヤーは非常に希少

状態 価格相場(USD)
ジャンク品 $500〜800
完動品 $1,500〜3,000
NOS(未使用) $5,000以上も

ビアリッツやインパラなどのコンバーチブルに純正装着された例は特に評価が高い。


🎯 まとめ

車載レコードプレーヤーは、単なる“オーディオ機器”ではなく、1950年代アメリカの「豊かさとロマン」の象徴でした。

キャデラック、クライスラー、フォード──各社が夢見た「走る音楽サロン」は、やがて実用性の波に飲まれましたが、その残響は今もなおクラシックカー文化の中で響き続けています。

 

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🎼 あなたのガレージにも、いつかこの“走るジュークボックス”を迎えてみませんか?